ヒーローを操って味方の兵士を援護しながら、敵兵士の掃討と相手ヒーローの打倒、そして敵陣地の制圧を目指す、「アクション+RTS」の多人数オンライン対戦ゲームが公開されています。
Vainglory」です。

MOBA」(DotA系 / LoL系)と呼ばれるジャンルのゲームで、RTS(リアルタイムの戦術シミュレーション)から派生したものですが、兵士は自動で動き、プレイヤーが操作するのは「ヒーロー」のみ。
敵チームのヒーローと戦うアクション性と、自軍を有利に導いていく戦略性が融合した、海外で人気の対戦ゲームジャンルです。

このアプリは昨年9月に行われた Apple の「iPhone 6 発表会」で、iOS8 の新しいグラフィック機能「Metal」のデモンストレーションに使われていました。
そのため世界的に注目されていた作品ですね。
欧米では昨年末に公開されていて、日本でも先日ようやく、日本語化されて公開されました。

内容としては「パソコンでプレイされている本格派の MOBA を、iOS で再現したもの」です。
よって良くも悪くも硬派で玄人向け。 操作も PC ライクですね。
キャラをアンロックする課金はありますが、アプリ本体は無料です。

Vainglory

Vainglory

3人のチーム同士が対戦する、6人で戦うゲームです。
オンライン対戦なので回線に繋がっていないとプレイ出来ません。
1プレイが 20~30 分ほどかかり、オンライン対戦なのでその間は離席できません。
時間のある時に準備をしてから挑みましょう。

マッチングは自動で行われます。 かかる時間は現時点で1分半ほど。
プレイヤーが多いため、そんなには待たされませんね。
プレイヤーデータを記録するにはアカウント登録が必要ですが、ゲストアカウントでもプレイ可能です。

ゲームはオーソドックスな MOBA(DotA系)です。
マップの上半分に「レーン」と呼ばれる、タワー(砲台)で守られた街道があり、両軍の一般兵士はここを進軍していきます。
下半分はモンスターのいる「ジャングル」になっていて、モンスターは敵軍ではありませんが、倒すと経験値やゴールドを稼げます。

基本的には、敵兵士を倒しながらレーンを進み、相手の砲台を壊していきます。
砲台はヒーローに大きなダメージを与えるため、味方の兵士と共に進まなければなりません
味方の兵士がいればそれが盾になってくれるので、安全に敵砲台を攻撃できます。

ただし当然、敵のヒーロー、すなわち敵のプレイヤーが邪魔をしてきます。
ヒーローとの戦いは対人戦なので、一筋縄ではいきませんが、倒せれば経験値を稼げます。
逆に倒されると相手に経験値を稼がれるので、ピンチの時はすぐに逃げなければなりません。

倒された場合、「復帰待ち時間」が経過した後、マップ端の本拠地から再スタートします。
この待ち時間は倒された回数が増えるほど長くなります

本拠地では稼いだお金で武器や防具、アイテムなどを購入でき、ヒーローをパワーアップさせられます。
復帰待ちの間にも買い物はできるので、その時に済ませておきましょう。
また待ち時間中にマップを見回し、敵味方の戦いぶりをチェックする事もできます。

このゲームはヒーローの基本ステータスは、買い物で強化します
レベルアップで得られるのは「スキルポイント」で、各ヒーローは3つの固有スキルを持ちます。
強力な攻撃をするものや体力を回復するものなど様々で、その使い方が戦いの鍵を握りますね。

Vainglory
※このゲームは経験値稼ぎより、ゴールドと、そのゴールドで何を買うかが重要。
武器には新規購入とアップグレードがあり、例えば剣は上位のものを買うと、下位のものが上書きされます。
アイテムの所持枠は6つしかないので、なんでも買うことは出来ません。
また消費アイテムにも所持枠を使うので注意して下さい。


Vainglory
※魔導アーマー(?)に乗った「ジュール」の必殺技、貫通ビーム攻撃。
どのキャラも3つのスキルを持ちますが、最初に習得できるのは2つ目まで。
3つ目は必殺技扱いで、レベルが高くならないと使えません。


このゲームの MOAB(DotA系)としての特徴は3つ。

まず、茂みの中に身を隠せること。
茂みの中で停止すると、その場で屈んで半透明になり、敵に視認されなくなります。
もちろんミニマップにも映りません。

数人で茂みに隠れ、通りかかる敵を奇襲するのは、このゲームでは常套手段です。
ジャングルには茂みが多いので、ゲリラ戦が展開されますね。

もう1つは「ミニオン鉱山」と呼ばれるものがジャンルの中にあり、守備モンスターを倒して占領すると、ミニオン(兵士)がパワーアップすること。
鉱山は2つあり、両方とも占領すれば兵士はかなり硬くなります。
2つとも取られると明らかに不利なので、ジャングルには嫌でも踏み込まなければなりません。

ゲーム中では「レーン(街道)担当とジャングル担当は分けた方が良い」とアドバイスされますが、その辺も状況次第ですね。
ヒーロー的には、遠距離攻撃キャラはレーン、近距離攻撃キャラはジャングルに向いています。

鉱山には「ゴールド鉱山」もあり、徐々に金貨が蓄積され、守備モンスターを倒せばそれを自軍のヒーローで山分けできます。
ただ、ゴールド鉱山の守備モンスターは強いので、数人で協力する必要があります。
マップの特定の位置を指し示す「シグナル機能」があるので、これを使って味方を集めるのが有効ですが、モンスターと戦っている最中に敵ヒーローが攻め込んで来ると横取りされることも。

そしてもう1つの特徴として、強力なモンスター「クラーケン」の存在があります。
これは 15 分ごとにジャングルの中央に出現し、倒すと捕獲したことになって、味方として敵軍に攻め込んでくれます。
非常に高い耐久力と、砲台に対する攻撃力を持っていて、敵の守備を崩壊させることが出来ます。
有利な側が獲得するとそれで勝負が決まったりしますが、不利な側が一発逆転を狙える要素でもありますね。

ただ、クラーケンを取られた時点で降伏してしまう人もたまにいて・・・
この辺はオンライン対戦ならではの欠点でもあるでしょうか。

Vainglory
※この赤くて大きいのがクラーケン。 でもタコではないです。
15 分を過ぎると出るので準備しておくことが大切ですが、それは相手も同じ。
大抵は争奪戦となるバトルが繰り広げられます。
また、1人で捕獲できるほど弱くはないので、バトルの結果が相打ちに近い場合は、更なる争奪戦が・・・
でも、「取ったら勝ち」と言うほどの強さではないです。


Vainglory
※茂みに隠れて様子を伺い中。 伏兵戦術はこのゲームのキモです。
ただ、そこに敵が来てくれないと待ちぼうけですが・・・
他に地雷型のトラップなども用意されています。


このゲームをやっていて感じるのは、「スマホだから」「タブレットだから」みたいな考えを持たず、パソコンと同じレベルの本格 MOBA(DotA系)を再現しようとしていること。

Metal 対応の高度なグラフィックはもちろん、ゲーム性にもスマホだからと妥協している部分は見られず、ライトユーザーに迎合するような事もなく、PC でヒットしている MOBA をそのまま踏襲しています。

ビジネス的にも、ヒーローをアンロックするための課金はありますが、ガチャだとか、広告だとか、スタミナだとか、強制待ち時間だとか、そんなもの一切無し。
またヒーローはゲームプレイで得られる「グローリー」という通貨を貯めることでもアンロック可能なので、頑張れば無課金でも全キャラ使用可能になります

ただ、ユーザーによっては PC の MOBA そのままである事こそが、短所かもしれません。
育成要素やコレクション要素が一切ない、1回1回のプレイを楽しむのみのストイックなスタイルなので、長期的に積み重ねていくものは存在しません

ソロプレイも短いチュートリアルと、研究用の「練習」のみ。
ひたすらオンライン対戦を繰り返す内容で、「ストーリーモード」みたいなものはなし
いきなりチーム制のオンライン対戦に放り込まれるため敷居が高く、しかも初心者のうちは味方の足を引っ張りがち。

マップも1つのみで、その1つのマップのゲームバランスをひたすら練り込んでいるようですが、今時のゲームとしては多様性に乏しいのは否めません。
今のところギルドやランキング、リーグなどの機能もありません。
とにかく「硬派」なゲームです。

もちろん育成要素がないからこそ性能差の懸念なく互角に戦えるのだし、レートやランキングがないからこそ敗戦を気にせずプレイ出来るのですが、それでなくても敷居の高い内容なので、ヘビーゲーマー向けであることは否めませんね。

操作についても、移動も攻撃もタップで行う方式で、それは PC ゲームでは普通なのですが、仮想スティックと攻撃ボタンでも戦えた ヒーローズ・オブ・オーダー&カオス と比べると、やや最適化されていない印象もあります。

特に iPad だと、画面サイズに対してボタンが小さいうえに、手で持って操作していると親指の可動範囲に限りがあるため、プレイし辛くなります。 一瞬の操作が生死を分けるゲームなので、正直厳しい。
ゲーム内でも「iPad をテーブルにおいて、両手で操作しましょう」とレクチャーされるのですが、そのこと自体がタブレットとしては「うーん」と思わざるを得ません。
ボタンの配置をカスタマイズが出来れば、若干マシになると思うのですが・・・

もう1つ気にかかるのは、東アジアサーバーに入れられること。
この手のゲームは中国や韓国で人気で、「アジアサーバー」だとほぼ中国人と韓国人ばかりになります。
このゲームの場合、サーバーが東京にあるので回線は問題なさそうだし、チャットがないので中国語とハングルでメッセージが埋め尽くされることもないので、気にする必要はないかもしれませんが・・・

Vainglory
※ヒーローの1人。 無課金でも5人のヒーローを使え、さらに最初の所持金で1人購入できるので、最初から6人を選択可能です。
キャラは総勢 14 人で、課金キャラの方が強いと言うことはない模様。
キャラグラフィックは見てのように、アジア人が見ても違和感ないデザインです。
欧米丸出しって感じの絵柄ではありません。


Vainglory
※質感のある Metal のリアルなグラフィック。 でも影の表現は省略されている模様。
やや余談ですが、MOBA は「マルチプレイヤー・オンライン・バトル・アリーナ」の略です。
元々は DotA 系(Defense of the Ancients)や LoL 系(League of Legends)と呼ばれていたのですが、これらはゲーム名やユーザーが作ったコンテンツ名であり、その呼び名を巡って訴訟騒ぎもあったため、新たに「MOBA」の呼称が作られ、メディアやメーカーはこちらを中心に使うようになっています。


日本ではメジャーになりにくいジャンルですが、やはりやっていて楽しいですね。
ヘンな表現かもしれませんが、ただ勝敗のみを巡って同じフィールドでの対戦を何度も繰り返し、細かい戦法を見つめ直していくゲーム性は、ブームの頃の対戦格闘ゲームを思い出します。

MOBA としても、フィールドが広すぎず、メインのルートも1本に絞っていることで展開を激しくし、代わりに茂みや鉱山で戦略を作っているあたり、よく考えられた内容になっていると思います。

私的には、「スマホだからこんな感じで」みたいな作り方をするメーカーが多い中で、PC と同等のゲームを作ろうとしている事に、ゲーマーとして好感を持てますね。

決して万人向けとは言えませんが、アプリ自体は無料だし、課金者が有利な訳でもないので、新技術 Metal や海外で人気の MOBA がどんなものか見てみる意味でも、試してみる価値のあるゲームだと思います。
MOBA は日本ではメジャーになりにくいジャンルだと思いますが、スマホ / タブレットの MOBA は、当分これが定番になることでしょう。

Vainglory(iTunes が起動します)