最近、急に取り沙汰されるようになっているのが、スマホアプリの「ブースト問題」。
先日、著名ブロガーの山本さんが告発記事を公開しましたが、その少し前からこれを専門に扱ったブログ(アップトーキョー)が登場し注目されていて、ブースト抜きのランキング(アップランク偽)を作っているところまで現れ、ヘンな盛り上がり(?)を見せています。

DMM ニュース:中華勢の規約違反&出会い系アプリにみるブーストの根深き問題
アップトーキョー(ブースト問題を扱っているブログ)
アップランク(偽)(ブースト抜きのランキング)

こうした iTunes のアプリランキングへの工作は、巷の検索エンジンに対する SEO のように昔から行われて来たのですが、最近はかなりハデになっていて、ランキングの荒っぷりもかつてないレベルになっているようです。
そこでここでも iTunes ランキングへの工作や操作広告についてまとめておきたいと思います。

まず話題の「ブースト問題」「ブースト広告」というのは、iTunes のアプリランキングの操作を目的とした広告のことです。
広告会社にお金を払い、ランキングを一時的に高める(打ち上げる、ブーストする)広告を「ブースト広告」と言い、これにはいくつかの種類があります。

いま注目されているのが「小遣い稼ぎ系」のアプリです。
広告が一覧表示され、ダウンロードして起動するとポイントを獲得でき、それを Amazon ギフト券や iTunes ギフトコードなどに交換できるもの。
やっている人はタダでネットマネーを稼げますが、もちろんギフトコード分の代金は、広告の掲載を依頼したメーカーが支払っています。
言わば「お金でランキングやダウンロード数を買うシステム」ですね。

小遣い稼ぎアプリ
※もちろんごく一部。 まだまだあります。

ダウンロードされたアプリの多くはすぐに削除され、また繰り返しダウンロードされるので、実際に利用されているとは限りません。
しかしダウンロード数だけはギュンギュン上がります。

今の iTunes のアプリランキングは 19 時頃に更新されるようで、このブースト広告を 17 時に掲載することで、19 時更新のランキングで一気に順位を上げられるようです。
また、こうした小遣い稼ぎアプリを使っているのは主に小学生・中学生・高校生などのお金のない学生で、そうした学生の下校時間を狙ってブーストをかけているのもあるようです。
よって、いかがわしいアプリのダウンロード数を小学生がせっせと上げていたりする実体もあります。

※その後、iTunes 側がランキングの更新時間を変更、それに伴って全時間帯でブーストが行われる展開になっています。

ランキングが上がれば、それを「人気があるアプリなんだ」と思ってダウンロードする人も増えます
結果、ダウンロード数がさらに上がり、運と内容が良ければランキングに定着できて大きな収益に繋がります。

また、最近リジェクト(Apple の審査落ち)の原因になっていると話題なのが「ウォール広告」。
ウォール広告とは画面全体にアプリの広告が並んでいて、それが独自のランキング形式になっていたり、アプリの中に「オススメ」と入っていたりするもの。
もちろん広告会社への支払いが良いものほど、上位やオススメになっていると考えられます

「おすすめアプリ」とか書かれているボタンを押し、一覧が表示されて、そこに「特にオススメ!」とか「売れ筋ランキング」とか書かれていると、思わずダウンロードしてしまう人が多いようですね。

また、以前からリジェクト対象になっていたにも関わらず、今でも盛んに行われているのが「リワード広告」。
これはダウンロードして起動することで「ダウンロードした人が」報酬を貰える広告で、よってお小遣い系もリワード広告の1種です。
ゲーム内の通貨を貰えるものが多く、「ダウンロードして会員登録すれば通貨石 10 個プレゼント!」みたいなやつです。

ウォール広告やリワード広告はランキング操作だけが目的ではなく、それ自体も広告なのですが、これらで重要なのは Apple(及び Google)は1円の得にもならないということ。

Apple / Google はアプリの購入費や課金の 30 %をライセンス料として徴収しています。
いわゆる Apple 税 / Google 税です。
たとえ問題のある方法でも、それが iTunes の決済を通していると Apple には 30 %のお金が入る訳ですが、お小遣い系だと無料アプリのダウンロードが繰り返されるだけなので、そのダウンロード数に応じてメーカーから広告会社にお金は行っていても、Apple の収入はゼロ。

ウォール広告やリワード広告も広告会社には報酬が支払われていますが、無料アプリだとその後に課金されない限り、Apple に収益はありません。
若干の間接的な宣伝効果はあるかもしれませんが、Apple としてはランキングを荒らされるだけで目立った収入はないので、単なる迷惑です。
この辺がウォール広告 / リワード広告のリジェクトに繋がっていると思われます。

さらに最近、注目(?)されているのが AppBank ブーストと中華ブースト。

AppBank ブースト」というのは、アクセス数が非常に多く、動画の閲覧数も多い AppBank に宣伝を依頼すること(及び後述するブーストアプリに広告が掲載されること)です。
かなりの費用がかかるようですが、大きく取り上げられれば効果も大きい模様。
特に小学生~中学生の利用者、動画閲覧者が多いようで、ランキングへの影響が大きい世代にアピールできるというのがあるようです。
ランキング操作だけが目的ではないので「ブースト」と呼ぶのは違う気もしますがネイティブ広告(広告に見えない広告)と言える事例が多く、気になる点も多いですね。

※ AppBank『ブースト』というのは AppBank への宣伝依頼と言うより、AppBank が運営している「モンスト攻略アプリ」などを介してアプリをダウンロードすると、モンストのオーブが貰えるといった広告のことでした。 つまり、やはり完全な「ブースト広告」のようです。

※AppBank とモンスターストライクのブーストは、Yahoo などに 告発記事 が掲載された末、現在は終了しています。


中華ブースト」は・・・ そう呼ばれてはいるものの、実体はよく解りません。
ただ海外を通して行う、マナーを無視した人海戦術によるブーストのようで、これも仲介業者に依頼して行うようです。
「どうしてこんなのが上位なんだ?」と思うようなアプリは中華ブーストであることが多く、時間帯によってはここまでに述べたブーストを超える効果を出すこともあるようです。
海外でアプリをダウンロードしても日本のランキングには本来影響はないのですが、その辺には抜け道がある模様。
まあオンラインにおける RMT 絡みの中華系の不正は私も散々見て来ているので、何があっても不思議ではありません。

※中華ブーストについては このような画像 が公開されています。 何らかの中華系不正の現場と言われています。(gori.me)

広告以外にもランキング操作は存在します。
昔から行われているのは「自社買い」。 
他の業種でも自社で買って売上げを水増ししている話がたまに出て来ますが、アプリでも昔から行われていて、ある意味古典的な方法です。

自分でアプリを購入 / 課金しても、Apple 税 / Google 税の 30 %は取られますが、70 %は自社に戻って来ます。 それで 100 %分の売上げを計上できます
これで有料アプリランキングやトップセールスランキングの上位を取ることが出来る訳です。

最近は有料アプリが減り、トップセールスはあまり見られなくなっていると思うので、効果は減っていると思われますが、手軽に行えるうえに「課金に使われたお金の出所がどこなのか」なんて調べようがない(おまけに Apple / Google 的には出所がどこだろうと利益になる)ので、今でも行われているようです。

他にも工作とは言えませんが、ランキング操作に大きな影響があるのがリセマラと招待コード。

ゲーム序盤にタダで行える課金ガチャの結果が悪かったら、アプリを消してダウンロードからやり直す・・・
その「リセットマラソン」、通称「リセマラ」は、ダウンロード数に大きな影響を与えています。
特にお金のない学生がソーシャルゲームを始める際の常套手段になっていて、人によっては 100 回ぐらいマラソンしたりするので、ゲームが「そうさせることを考慮した作り」になっている事も多いです。

ダウンロード数を発表する際、メーカーによってリセマラを含むか含まないかは違っていて、パズドラはリセマラを含まない数字を発表しているようですが、コロプラやセガ、スクエニはリセマラ込みなので、発表されたダウンロード数と実際のユーザー数は大幅に異なります。
いずれにせよ、ソシャゲがダウンロード数を水増しする際の一般的な手段ですね。

招待コード」も、アプリレビューを利用した変形型のリワード広告(自前のプロモーション)と言えます。
実際にマジメに友達を招待して報酬を貰っている人はごく僅かでしょうから、ほとんど水増しコードでしょう。
しかもコードの入力を誘導する高評価レビューが多発するので、レビュー工作、評価工作にもなります

これらが(特に小遣いブーストが)駆使されている結果、今の無料アプリランキングは、かつてないほど酷くなっているようです。
元々 iTunes のランキングはアテになりません。 工作は昔から横行していました。
ただ、それでも目安として全く役に立たない訳ではないから、「そういうのがあるというのを知った上で見るようにしましょう」と、このサイトでは言ってきました。
しかし今の無料アプリランキングは、そう言うのもはばかられそうな状態・・・
だからこそ、ここに来て話がぶり返しているのだと思います。

念のため言っておきますが、ブーストしているかどうかと、内容の良し悪しは別です
ダメなアプリだとブーストしてもすぐにランキングから落ちる訳ですが、中には内容が良くて、そのまま人気になるアプリもあります。
モンスターギアが上位なのはブーストに加えて中身も良いからでしょうし、モンスターストライクも当初は派手なプロモーションをかけていました。

ここまでスマホアプリが増えると、ただ公開しただけでは誰にも知られず、普通に宣伝しても埋もれてしまうので、普通じゃない方法が盛んになるのは仕方ないかもしれません。
正当な宣伝と不正な宣伝では、不正な方が効果あるのは当たり前でしょうしね。
しかしだからと言って、それが不正に対する免罪符になる訳では決してありませんが

まあユーザーとしては、これで目立った実害がある訳ではありません。
せっせと小遣いを稼ぎたい学生さんはそれで稼げばいいし、iTunes ランキングは参考にしなけりゃいい。
ブースト広告が潰れて、それらが鬱陶しい全画面広告なり強制動画広告なりに流れてしまうと、その方がユーザーとしては迷惑なのもあります。

しかしこういう事実を知らずにランキング操作に振り回されていると、実際には人気のないぁゃしぃアプリをつかまされてしまうので、知識として知っておき、そのうえで iTunes やスマホアプリ、各種広告と付き合っていくようにしましょう。