iPhone 6s / 6s Plus の本体の話は iOS9 の機能と不具合報告 のページで扱っていましたが、ここに来て CPU に「サムスン製」と「TSMC 製」の2種類があり、双方に性能差があることが巷で大きな話題になっているため、個別にページを作ってまとめておきたいと思います。

samsungvstsmc
※画像は iFixit の Youtube iPhone 分解動画より

まず、iPhone 6s / 6s Plus のハード(本体)の不具合報告から。
報告の中には単なる初期不良も含まれていると思われますが、以下のような報告が多いです。

少し使っただけで異様に熱を持つ
ホームボタンがすごく熱くなる
たまに通知音が鳴らない
ノイズが入る症状が頻発する、音割れする
急に強制再起動する。 もしくはフリーズする
タッチの反応が悪い

スマホが異様に熱を持つのはバッテリーの不良である場合が多いのですが、iPhone 6s の場合は CPU の発熱も指摘されています。
検証があった訳ではありませんが、CPU の性能が高まれば発熱も高まるのは道理です

また、感圧センサーが加えられたことで内部構造が密になったため、放熱に悪影響があるのでは、というのも発売前から懸念されていました。
バックで動いている何らかのソフトが CPU に負荷をかけ続けている可能性もあります。

ホームボタンがすごく熱くなる症状は iPhone 5s の頃から報告があり、何かの原因で Touch ID(指紋認証)が暴走している可能性があります。
それがソフト的な暴走なら、本体の再起動で改善されるはずです
それでも治らない場合は単にセンサーの不良であるケースも考えられます。

急に再起動する、フリーズするという安定性の問題は、iOS9 が原因になっている可能性があります。
初期の iOS9 を使っている人は最新版にして下さい。
通知音の問題も iOS 9.0.1 以降では修正されているはずです。

ノイズが入る、音割れするといった症状は、本体の種類に限らず、負荷が高くなっている時や、メモリが足りなくなっている時に発生します
(大抵、そのまま使い続けていると落ちてしまいます)

iPhone 6s / 6s Plus はメモリが 2GB になっているため、メモリ周りが原因で不安定になるケースは減っているはずですが、報告を見る限り、逆に増えています。
ハードや OS が新型メモリ(LPDDR4)に十分対応できていない可能性もあります。

いずれにせよ、本体を再起動してソフトとメモリをリセットすれば症状は軽減されるはずなので、iPhone、及びスマホ全般の基本である「不具合があったら本体を再起動する」を忘れないようにしましょう
症状によっては、強制再起動の方が効果があるかもしれません。

本体の再起動については こちら のページをご覧下さい。

なお、一部のアプリは iOS9 だとノイズが入り、落ちてしまいます。
本体ではなく、アプリと iOS9 の相性で症状が発生するケースもあるようです。
GUN SPIRITS がこの症状でしたが、アップデートで解消されています。

タッチの反応が悪いのは、一部のアプリで報告があります。
これは新搭載の感圧センサーへの対応・調整が不十分なためと思われます。
画面が不良であるケースもあるかもしれませんが、指の大きさや押し方も関係すると思われるので、この辺は OS やアプリの対応を待つしかなさそうですね。
Kingdom Rush でこの症状が発生していたようですが、アップデートで改善された報告があります。

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続いて、iPhone 6s / 6s Plus のパーツのメーカー差について。

まず CPU(Apple A9)には、韓国のサムスン社で生産されたものと、台湾の TSMC 社で生産されたものの2種類があります。

「A9」プロセッサの製造元はSamsungとTSMC(iTmedia)

この2つは大きさが異なり、プロセスルール(内部の細かさ)にも違いがあるので、「もう別の CPU なんじゃ?」というのは発売当初から言われていました。
それでも同じ A9 ですから常識的に考えて、性能に差はないだろうと言われていたのですが・・・
どうも違うようです。

各所で報告されているベンチマーク結果を見ると、TSMC 製の方がスコアが若干高く、そしてバッテリーの駆動時間も優れているという報告が見られます。

「A9」チップ、製造元により性能差があるかも…(GIZMODE)
A9 プロセッサ - 性能はTSMC製が上か(気になる、記になる…)
Apple、チップによって性能差があることを認める(かみあぷ速報)

サムスン製 A9 は 14nm プロセス、TSMC 製 A9 は 16nm プロセスで製造されており、プロセスルールは小さいほど良いので、普通に考えるとサムスン製の方が性能が良くなるはずなのですが、ほとんどのベンチマーク報告で TSMC の方が上の模様。

加えてバッテリー駆動時間には誤差とは言えないほどの差があり、計測によっては2時間も違ったとの報告があります。
ただ、バッテリー駆動時間は他の要因(例えばバッテリー自体の品質)も大きく影響するため、そのまま鵜呑みにはできませんが。

ともあれ巷では「TSMC の iPhone 6s はアタリ、サムスンの iPhone 6s はハズレ」みたいな話になっています。
自分の iPhone 6s / 6s Plus がどちらの CPU かは、以下のアプリで確認可能です。

Lirum Device Info Lite - System Monitor(iTunes 起動)

システムやハード構成をチェックするアプリはいくつかあるのですが、これが一番詳しく、インターフェイスも見やすいと思います。 広告も出て来ません。

表示される型番と、本体・メーカーの組み合わせは以下の通りです。

【 iPhone 6s 】
N71AP:サムスン製
N71mAP:TSMC 製

【 iPhone 6s Plus 】
N66AP:サムスン製
N66mAP:TSMC 製

要するに「m」があったら TSMC、なかったらサムスンです。
発熱もサムスンの方が高いとのことで、「iPhone 6s が妙に熱くなる」という話に関係しているかも・・・?

※なお、上記の型番はマザーボード(基板)のもので、CPU 自体のモデルナンバーはサムスン製が APL0898、TSMC 製が APL1022 です。

こちらの記事 によると、iPhone 6s は8割が TSMC 製、2割がサムスン製ですが、iPhone 6s Plus は両者の割合が五分五分とのこと。

※上記の情報は、集計元が iPhone 6s と iPhone 6s Plus を逆に表記していたようです。
実際には iPhone 6s はサムスン製と TSMC 製の割合が五分五分、iPhone 6s Plus は TSMC 製が約 75 %、サムスン製が約 25 %のようです。
独自にアンケートを行っている こちら(Touch Lab)の情報が正確なようです。


ただし、今は CPU の件ばかりがピックアップされていますが、元々 iPhone は各社のパーツを集めて組み立てられており、製造元が複数あるパーツは CPU だけではありません

フラッシュメモリ(データ記録装置)も東芝製と韓国 SK ハイニックス社製のものがあることが iFixit の分解報告で明らかになっています。
そしてフラッシュメモリと似たデータ記録装置である SSD は、東芝製は耐久性と安定性重視、ハイニックス製やサムスン製はスピード重視で耐久性にやや劣るため、正反対の性質であり、iPhone でも品質に違いがあるのではないかという懸念があります。

また iPhone 5 では一部のバッテリーに不良があり、「バッテリー交換プログラム」の対象になっていましたが、これもサムスン製のバッテリーを搭載した iPhone のみで発症していたことが明らかになっています。(そして私は見事に不良品を掴まされた)
つまりバッテリーにもメーカー差や個体差があります。

なにかサムスン製ばかりに問題があるように見えますが、一応フォローしておくと、サムスンは PC パーツメーカーとしては老舗かつ定番で、パソコンの機器においてはそんなに悪いメーカーではありません。(もちろん好みはあるだろうけども)

また、これだけ言っておいて何ですが、一般的な使用では大きな差がある訳ではなく、本体の不具合もあくまで一部であって、そこまで不良が多い訳ではありません。

Apple の公式見解では「A9 の2社のチップに性能差はあるが、2~3 %の範囲であり、誤差の範疇だ」とのことで、バッテリー駆動時間についても同様のコメントをしています。