私がプレイしたドイツゲーム(近年のボードゲーム)の中ではもっともヘビー。
産業革命時代のイギリスをテーマにした、複雑なルールと奥深いゲーム性を持つ重量級のドイツゲームが公開されています。
Brass」です。

2007 年に公開されたようですが、ドイツ年間ゲーム大賞、ドイツゲーム賞、共に選出作にはなっていません。
さすがにここまで複雑だと、プレイしやすさも考慮されるドイツ年間ゲーム大賞ではスルーされるだろうし、プレイヤーも限られるだろうから投票で決まるドイツゲーム賞でも上位にはならないでしょうね。
1ゲームの時間も(アプリ版なのに)たっぷり1時間ほどかかります。

しかしその分、ゲームとしてのバランスやシステムは作り込まれていて、対戦型の開発シミュレーションゲームとして楽しめる内容になっています。
定価は 840 円。 買い切りなので広告や課金は一切ありません。

brass

システムが難しく、細かいルールも多いので、今回はレビューと言うより「ルール説明」に終始しますが、そこからどんな内容か察して頂ければと思います。

プレイ人数は3~4人。
自分の番には2回の行動を行えますが、1ターン目は1度しか行動できません。

まず画面下には、建設・運河・衣類販売・改良・借金・パス の6つのアイコンが並んでいます。
また、ゲーム開始時に各プレイヤーには8枚のカードが配られます。

ゲームの中心となるのは、施設の「建設」。
建設はカードを使って行いますが、カードには「土地カード」と「産業カード」があります。

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土地カードは、その土地に好きな施設を建設できるカード
産業カードは、好きな土地にその産業の施設を建設できるカードです。
ただし産業カードの使用には制約が多く、好きな土地に施設を建てられるのは最初だけです。

土地カードの場所がどこなのかは、画面左下のカードボタンをタップし、土地カードを選ぶことで確認することが出来ます。
イギリスの一地方が舞台なので、日本人には馴染みのない地名が多く、いちいち確認しないと場所がよく解らないのは欠点と言えますね。

産業には 港・紡績・炭鉱・製鉄・造船 の5種類があります。
まず建設費は高めですが、手っ取り早く収益に繋げられる「紡績工場」を作るのが良いでしょう。

しかし紡績工場を作っても、すぐに収入は増えません。
作った商品の「販売ルート」を確保する必要があります。

紡績工場を作ったら、その場所を大都市か港と「運河」で繋ぎます。
運河の建設にはカードと建設費が必要ですが、カードはどれを出しても構いません。
最初は港はないので、大都市と繋ぐのが解りやすいでしょう。

ちなみに運河は他の人が作ったものでも利用できます。
「だったら自分で作る必要ないんじゃ?」と思いそうですが、都合の良い場所に他の人が運河を作ってくれるとは限りません。
また、産業カードで施設を作れるのは「自分の運河」で繋がっている土地のみです。
運河はどこでも作れる訳ではなく、自分の施設か運河のある場所から繋げていかなければなりません。

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紡績工場を作って、大都市と運河で繋がれば、晴れて収入がアップ・・・ するとは限りません。

衣類販売」のボタンを押して、カードを1枚捨て、紡績工場と大都市を選択すると衣類が運ばれていきますが、その後に「需要減少チップ」を引きます。

このゲームにはイギリス国内の石炭・鉄の「保有量」と、衣類の「需要」があり、需要減少チップが -2 だと、衣類の需要メーターが2つ下がります。
これによって衣類の価格が低下、もし No Demand(需要なし)まで下がると衣類を買い取って貰えなくなります。

まだ需要が残っていれば、ようやく衣類の販売ルートが確立。
紡績工場が金色に輝き、毎ターンの収入がアップして、勝利点も増加します。

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※大都市ヨークシャーの周りに紡績工場が乱立中。
1つは販路を確立し金色になっていますが、実はこの時点で衣類の需要はゼロ・・・
残りの紡績工場は赤字の危機。


では衣類の需要が 0 になった後の紡績工場はムダになるのか?
まだ「」で輸出するという方法が残されています。

イカリのマークがある土地に港を建設し、運河で繋げることで、国外に衣類を販売できます。
この場合、紡績工場に加えて、港の運営も満たされ、港からも収入と勝利点を得られます。

ただし港も販売ルートの確立に使用されると金色になり、他の販売ルートには使えなくなります。
需要が無くなって港も残っていない場合、まだ売れていない紡績工場は・・・ 「残念」ということになりますね。

なお、港は他のプレイヤーのものでも利用できます。
この場合、港の収入と勝利点はそれを所有しているプレイヤーのものとなりますが。

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※紡績工場は港と繋げた方がお得。 ただし手間はかかる。
同じ場所に港と紡績工場があれば輸送しなくても販路を確立できますが、運河時代の間は同じ場所に同じプレイヤーが2つの施設を持つことは出来ません。
なお、金色の港でも、イギリス国内の衣類需要がまだ残っているなら、国内へ運ぶ輸送路(大都市と同じ扱い)として使えます。


残る産業のうち、「炭鉱」と「製鉄所」は、それぞれ「石炭」と「」を供給します。

炭鉱を作ると(レベル1なら)石炭が2つ生産されます。
これは製鉄所や造船所を作る材料となり、運河によって運ばれますが、この2つの石炭が販売されないと炭鉱は収入源になりません。

製鉄所も同様に(レベル1なら)鉄が4つ生産され、これを全部出荷しないと収入と勝利点は得られません。
また、こちらは建設に石炭が必要で、それを供給できる炭鉱か、大都市 or 港と建設場所が繋がっていなければ作れません。

もし大都市や港から石炭を運んでくる場合、購入費がかかります。
値段は「イギリス国内の石炭の保有量」に左右され、買うことでこの保有量メーターが下がっていき、価格が高くなります。
ただメーターが下がれば、新たに作った炭鉱は大都市や港に石炭を運ぶことで、その分だけ販路を確保でき、売却益も得られます。

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※石炭と鉄のメーターは需要ではなく、国の在庫。
ここから買う場合は書かれている分の費用が必要で、逆に売る場合はその分だけ儲かります。


ゲーム序盤は石炭の消費量が少ないので、炭鉱はあまり収入源になりません。
一方、鉄は「産業の改良」によって消費されます。

各産業には技術レベルがあり、最初は1ですが、その施設を作る度に技術メーターが上がっていき、最大になるとレベルアップします。
技術レベルが上がると収入や資源の生産量、販売ルート確立による勝利点が増加します。
建設費が増える、レベル3以降は収入が減るといったデメリットもありますが・・・

そしてもっと重要なことは、このゲームは前半戦の「運河時代」と後半戦の「鉄道時代」に分かれており、鉄道時代に入るとレベル1の建物は全て撤去されてしまうこと。

技術レベルは施設の建設で自然に高まっていきますが、後々まで使える施設を早めに作りたいのであれば、施設の「改良」で最低でもレベル2まで上げておく必要がありますね。

改良にはカードが1枚必要になりますが、どれでも構いません。
また、1回のアクションで2回実行できます。
実行時に鉄が1つ必要になり、在庫のある製鉄所がない場合は、イギリスで保有されている鉄を購入することになります。
値段は保有量メーターに左右されます。

この改良は主に序盤に行われるので、鉄は早いうちから不足しがち。
よって炭鉱と違い、タイミングが良ければ序盤でも製鉄所で大きな利益を上げることが出来るでしょう。

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※技術改良画面。 先にレベル2にするか、それともレベル1で早期に建設するか。
紡績工場はレベル2にすると、建設に石炭が必要になる点も悩ましい。
この辺も戦略の取捨選択の1つでしょう。


実行できるコマンドには、もう1つ「借金」があります。
いかにもネガティブな響きですが、「融資」と言った方が良いかもしれません。
このゲームの進行には不可欠な要素です。

実行時にはカードを1枚捨てます。
借り入れを行うと、収入が減少する代わりにまとまったお金が手に入ります。
土地も販路も取り合いのゲームですから、ノンビリやっているヒマはありません。
毎ターンの収入を減らしてでも資金を確保し、発展に繋げていく必要がありますね。

他に補足として、以下のような細かいルールがあります。

・次のターンの各プレイヤーの順番は、前のターンで資金をあまり使っていない人が早くなる。
・同じ産業カード2枚と、アクション2回分で、好きな場所にその産業の施設を作れる。
・衣類販売は、販路を作れる紡績工場が2つあるなら両方実行できる。
運河時代の間、同じプレイヤーが同じ土地に2つの施設を持つことは出来ない。
・借金は終盤になると行えなくなる。(最後のターンに LAST LOAN と表示される)
・運河や鉄道の点数は、接した土地にある販路が確立した施設(金施設)の数になる。また、一方が都市だと+2。

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※ターン終了時の画面。 各プレイヤーがそのターンに使ったお金が表示されていて、次のターンはこれが少ない人の順になります。
コンピューターのターンの場合、右下の「SKIP ANIMATIONS」のボタンを押すと行動アニメーションが表示されず、すぐ次の人の番になります。
そのターンに何をやってたか解り辛くなりますが、何をしたかは画面右側に表示されています。 英語だけど。


ゲームの最初の8ターンは運河時代。
それが過ぎると、いよいよ後半戦「鉄道時代」の8ターンが始まります。

鉄道時代では運河が時代後れとなり、全て撤去されます。
そして前述したように、レベル1の施設は状況に関わらず全て消滅します。
そして運河建設のボタンは「鉄道」のボタンに変わります。
また、衣類の需要は最大まで戻り、これ以後は同じプレイヤーが同じ場所に複数の施設を持てるようになります。

ここからは鉄道の建設に石炭が必要になります。
また鉄道は追加費用を払うことで、まとめて2つ建設可能。
レベルが上がった紡績工場も建設に石炭を必要とするので、石炭の需要が跳ね上がり、炭鉱が収入の確保に重要になります。 ただし勝利点は低め。
改良はあまり行わなくなりますが、高レベルの炭鉱には鉄が必要になるので、鉄の需要もなくなる訳ではありません。

鉄道時代は一気にゲームが進みます。
各時代でバランス良く発展させていくか、運河時代を準備期間と考え鉄道時代に一気に追い込むか、その辺も重要ですね。

施設にはもう1つ、造船所があります。
造船所は作れる場所が限られていますが、作るだけで収益や勝利点を獲得できます。
しかし石炭と鉄が両方必要で、建設地まで運ぶ輸送路も必要、加えて建設費が非常に高く、しかも最初はレベル0なので改良で上げておかなければなりません。

ただ勝利点は非常に高く、一発逆転を狙えます。
他の戦略がうまく行かなかった人のための特殊施設と言えるでしょうか。

鉄道時代の終了後、勝利点に残り資金のボーナス(10 あたり1点)を加え、得点がもっとも高い人が勝利です。

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※ラストの得点集計画面。 保有資金や収入などもここで確認可能。
右側にあるのは収入レベルで、施設の収入アップは、正確には「収入レベルのアップ」です。
この収入レベルによって、毎ターンの実際の収益が決まります。


初回プレイはルールを追うだけで手一杯になると思います。
戦略とか色々考える余地はなく、そのため勝つことは難しいでしょう。
でもだからこそ、次回以降のプレイでいかにゲームを効率化し、勝利に向かっていくかという面白さを体験できます。
カードによってどの産業を優先するか、どの地域から押さえていくかなども変わって来るので、展開も一様ではありません。

ただ、1プレイがすごく長いので、手軽に遊べるゲームではないですね・・・
「さあ、ボードゲームをやるぞー!」みたいな感じで、じっくり構えて遊ぶゲームと言えそうです。
オンライン対戦も備わっているのですが、この長さでオンライン対戦はちょっとやる気になれない・・・
本体を交互に使っての対戦も可能です。

ドイツゲームが好きな方、むしろそっち方面にマニアな方にお勧めのアプリです。

Brass(iPhone 版、iTunes 起動)

Brass(Android 版、Google Play へ移動)

※Youtube プレイ動画(BoardGameGeek)