時代を超え、歴史の裏で暗躍するアサシン教団とテンプル騎士団の戦いを描いた、海外で大ヒットしているステルス暗殺アクションゲーム「アサシンクリード」
その iOS 版の新作が先日公開されました。
アサシンクリード アイデンティティ」(Assassin's Creed Identity)です。

舞台はアサシンクリード II、及びその派生作と同じ 15 世紀のイタリア、ローマ
プレイヤーはアサシンの一人となり、アサシン狩りの傭兵団「黒鴉団」との戦いを繰り広げます。
PC 版や家庭用ゲーム機版で見せた、美しいグラフィックは iOS でも健在です

ただ、ゲーム内容は・・・ 「スマホ版」の作り。
元々は本体無料の課金型ゲームとして作られていたようで、買い切りゲームに変更はされましたが、その名残を引きずっています。
ストーリー演出に乏しく、似たようなミッションを繰り返す内容には、悪い意味でのソシャゲ感、スマホゲーム感がありますね・・・

アプリ本体の価格は 600 円。 買い切りになったのでスタミナはなし。
しかし課金はあり、正直「課金型ゲームからスタミナと広告を取っただけ」という感じもあります。

アサシン クリード アイデンティティ

アサシン クリード アイデンティティ2

3D グラフィックで後方視点のステルス(隠密)アクションゲームです。
「対象の暗殺」「要人の護衛」などのミッションが提示され、広い町の中でターゲットを見つけ出し、任務を遂行すればステージクリア。
場合によっては 対象の尾行 → 暗殺 → 脱出 といったように、途中でミッションが変わっていくこともあり、1ステージの長さは 10 分前後です。

ステルスアクションなので、敵と正面切って戦う訳ではありません。
最初は警戒されていない「一般市民状態」で、この時に敵に接近して暗殺のボタンを押せば、一撃で葬ることが出来ます。
敵兵の目の前で暗殺するとさすがに見つかりますが、そうでなければ騒ぎにもなりません。

ただし、敵兵に近付き過ぎたり、行動を怪しまれると「警戒状態」になります。
この時にさらに不穏な動きをしたり、敵兵の前で殺傷沙汰を起こすと「戦闘状態」に。
こうなると剣を振るって戦うか、ダッシュで逃げるしかありません。
場所によっては見られるだけで警戒、近付くだけで戦闘になる「高警戒エリア」も存在します。

警戒状態なっても、ワラや草むらの中に隠れたり、人混みに紛れることで、一般市民状態に戻ることができます。
また、ツルツルでない壁はよじ登ることが可能で、簡単に屋根の上などに移動できます。
建物の屋根の上を伝っていけば、人目に付かずに行動することも可能。
屋根に見張りがいることも多いですが。

アサシン クリード アイデンティティ3
※ワラの中に潜み、近付いてきた敵を引き込んで暗殺。
職業によっては口笛を吹いて敵を誘き寄せることも出来ます。


アサシン クリード アイデンティティ4
※ベンチで談笑する一般市民に紛れて警戒の目を逸らすアサシン。
「服でわかるじゃん」というツッコミは厳禁。


アサシン クリード アイデンティティ5
※コロッセオの外郭を綱渡りするシーン。 迫力を感じる高さとグラフィック。
スパイダーマンのように壁も簡単によじ登れます。


見てのようにグラフィックはかなり高精細で、特に壁面の質感とかは凄いです。
人物や建物の影などもちゃんと表現されていて、ここはさすがアサシンクリードという他ありません。

ただゲーム面では、演出が乏しすぎる印象です。
ムービーは一切なく、ステージ中にストーリーを表現するようなシーンもなし。
ただの傭兵を暗殺する時も、黒鴉団の幹部を暗殺する時も、やることはほぼ一緒で、会話もない。
クリア後に「史料集」がアンロックされて、そこでステージの概要や顛末が「テキストで」語られるのですが、それだけじゃちょっと・・・

おかげで最初は良いのですが、展開がだんだん単調に思えてきます。
装備やスキルを獲得していく要素もありますが、戦い方が劇的に変わるほどではない。

加えてステージをクリアしてもレベルが足りない場合、次のステージに進むことが出来ません。
この場合、ランダム生成のステージ(及びクリア済みのステージ)を繰り返して経験値を稼がなければなりませんが、それがなおさら単調さを増幅させています。
買い切りゲームにしたんなら、そんな制限いらんだろ・・・

またステルスゲームとしては、見つかっても戦って敵を倒せば、それで済むところがちょっと微妙。
メタルギアのように「見つかったら立ち所にピンチ」ということはなく、装備とレベルが普通程度にあれば、簡単に敵を倒して切り抜けられるのです。
あまり難しいのも何ですが、これだとステルスゲームなのに緊張感がなさ過ぎる。

冒頭でも述べたように、どうにも「スマホゲームとしての作り」「スマホだからこんなもんで」といった印象を受けるのも否めません。

アサシン クリード アイデンティティ6
※ステージ選択画面。 ゲーム中だけでなく、メニューのインターフェイスなども綺麗に作られています。
全体的にクオリティは高いのですが、肝心のゲーム演出が・・・ 史料じゃねぇ・・・


アサシン クリード アイデンティティ7
※装備選択画面。 買い切りゲームになったからか、課金ガチャをしなくても SR クラスの武器をクリア報酬でゲット出来ます。
ただこの装備のシステム自体が、ソシャゲの名残である気も。


ここまでグラフィックや基本のゲームシステムを作り上げているのに、味付けが少ないのが残念という印象。
ストーリーも現時点では 1-10 までで、ボリュームも不十分
第二章の公開が予告されていて、1-10 のクリアでようやくスキルは半分程度、ゲームランクも6段階中の2段階目になるぐらいなので、これから拡張されていくのだと思いますが、コアなアサクリファンでないとアップデートを待つのは辛そう。

初めてプレイした時のインパクトは確かにあるので、初見で評価されがちな iTunes レビューで高評価になるのは解るのですが、数日プレイした人の意見を集めた場合、果たしてそこまで高い評価になるのかどうか・・・

まあ、まだこれからのゲームなのかもしれませんね。
ただ少なくとも、PC や家庭用ゲーム機版のような内容は期待しない方が良いでしょう。

アサシン クリード アイデンティティ(iTunes が起動します)

※Youtube 公式 PV