和風ファンタジーの白猫プロジェクト
今年4月に「Project: RISING」の名で公開されユーザーの注目を集めていた、スクエニの新作アクション RPG のソーシャルゲームが先日より公開されています。
サムライ ライジング」です。

先日、ほぼ同時に公開されたコロプラのアクション RPG ソーシャルゲーム「ドラゴンプロジェクト」をレビューしたので、こちらも扱っておきたいと思います。
先に結論を言ってしまうと、確かに「和風の白猫プロジェクト」と言える、高いクオリティーを持つ作品になっています。
しかし気になる点も多くあり、なにより既存のソシャゲの一歩先を行くドラゴンプロジェクトと比べると、単なる白猫のクローンという印象も強いです・・・

公開はスクエニですが、開発は ILCAAPPS(イルカアップス)というメーカーで、あの「おしり前マン」の開発元であり、他にも鷹の爪や gdgd 妖精s などの「ネタゲー」を作っていたところ。
そんなネタゲーメーカーがいきなり白猫とドラプロに挑んでいる訳ですが、いくらスクエニの皮を被ってても、おしり前マンが戦うにはコロプラは巨大すぎる・・・

ともあれ、スクエニが相当プロモーションをかけている作品ですね。
ソーシャルゲームなのでアプリ本体は無料ですが、もちろん課金やガチャがあります。
ただ、スタミナはなく、プレイ回数や時間を気にせず遊ぶことができます。

サムライライジング

クエストを選択して戦闘エリアに移動、敵をバシバシ倒しながら進行し、最後にボスと戦うアクション RPG です。
操作方法は 白猫プロジェクト と大差なく、ボタン連打で攻撃し、フリックで回避。
操作性は良好です。

10 以上のジョブ(職業)があるのがウリとされていますが、剣を使うキャラだとどれを選んでも大差はなく、主人公も武士も侍も陰陽師も似たような感じ。
と言うか、攻撃モーションは使う武器で決まるので、同じ武器なら同じモーションです。
矢を連射する狩人や、攻撃は遅いが強力な魔法弾を撃つ魔術師など、遠距離攻撃用のキャラもいます。

白猫の場合、スライムには魔法、飛んでいる敵には弓が有効といった相性があり、これを守って戦わないと苦戦しましたが、今作にはそういった武器相性はありません。 スライムも剣でザクザク切り刻めます。
よってキャラを使い分ける必要性はますます減っていますが、武器相性があると有効な武器を使えるキャラがガチャで出なかった時に行き詰まるし、切り替えが面倒なこともあったので、これはこれで悪くないと思います。

連打していると「セット攻撃」を自動で繰り出してくれますが、このセット攻撃の最後の一撃が出るのが遅く、スキも大きいのが特徴。 おまけに威力が強い訳でもありません・・・
ただ、攻撃モーションは回避によってキャンセル出来るので、役に立たないセット攻撃の最後を回避で無くしながら戦うのがゲームの基本戦法となります。

ハッキリ言って、セット攻撃を最後まで出さないのが攻略なんてゲームの欠陥でしかない訳ですが、皮肉にもこのゲームの場合、これがテクニックでありゲーム性になっています。
特に剣攻撃をするキャラの場合、4連打して回避を繰り返すことで敵をスピーディーにザクザク切り刻めるので、敵が多いのと相まって、爽快な無双感を得られます
連打するだけのゲームではなくなっているし、これはこれで良いですね。

ただ、回避キャンセルなんてそこそこゲーマーでないと気付かないので、ライトユーザーにとってはただ戦いにくいだけのゲームかも。
さらに格闘家やハンマー使いなどは最初から攻撃が遅く、だからといって威力が強い訳でもないので、ただノロいだけ。
ジョブが多いことがゲームの長所になっていません。

最後に登場するボスには、最近流行りの「部位破壊」があり、多彩で強力な攻撃を繰り出してきます。
このゲームのボスは攻撃範囲が非常に広く、回避してもしきれないことが多いです。
ここはモンハン的な感じで、ただ殴るだけではなく、相手の攻撃を大きく回避し、スキを見て攻撃しなければなりません。
ソシャゲなので強力なキャラと装備で力押しすることも出来ますが、ちゃんとテクニックも必要な戦闘になってますね。

パーティーメンバーは3人いて、白猫プロジェクトと同じく自由に切り替えられます。
全員全滅しないと敗北にはなりません。
これとは別に、自動で戦ってくれる助っ人キャラもいます。

今作の便利な機能は「AUTO」のボタン。
これを押しておくと自動でフィールドを進みますが、フリックやタップすることでオート中でも任意に操作できます。
オート戦闘は頼りないですが、バトルは自分で行い、移動だけオート任せに出来るのでラクですね。

サムライライジング
※攻撃はスキのあるモーションを回避でキャンセルするのが基本。
これに気付いてないと爽快感もプレイしやすさも大幅にダウン・・・
複数の種類の武器を使えるキャラの場合、何を持つかでモーションが変わります。
剣キャラや弓キャラは4回、魔法キャラは2回攻撃して回避しましょう。
格闘家(修)は2回近接攻撃し、間を置いて1回攻撃、さらに間を置いて1回攻撃するのでキャンセルはしにくいです。 ハンマー(匠)は攻撃が全部遅く、これらのキャラはどうしようもないですね・・・


サムライライジング
※ボスや魔法はファイナルファンタジーのものを踏襲していて、この辺はいかにも「スクエニの白猫」。
ボスの攻撃範囲に対して回避距離が短いので、大技をかわす時は早めに連続回避して大きく逃げなければなりません。
ボスを長押しすると狙う部位の指定ができますが、戦闘中にボスを長押しなんて非常にやり辛いので、そこが批判の対象になっています。
ただ、実際には無理にこれを使わなくても部位破壊は出来ます。 単に狙いたい部位に向かって攻撃すれば良いだけです。


クエストをクリアするとキャラの強化に使うオーブや御霊、そして数々の装備が手に入ります。
このゲームにキャラクターの経験値はなく、御霊を消費して任意のステータスをアップさせる形。
キャラレベルは強化した回数になります。

装備はいらないものを「合成」してレベルアップさせる一般的な形式ですが、このゲームの装備はレアリティによってやたら性能差があります。
例えば、レアリティが1の鎧は防御が8で、強化しても 10 や 12 ぐらいなのですが、レアリティ2の鎧はいきなり防御 58。

こんな状態なので、弱い装備をいくら鍛えたって一時的なものでしかありません。
その分「ハクスラ」らしい、質の良い装備をドロップで手に入れることが重要なバランスになっています。
序盤はレアリティ1の装備しか出ないので、早くストーリーを進め、レアリティ2や3の装備が出るエリアまで急ぐ方が良いですね。
会心アップや MP 底上げなど、ランダムな特殊効果が付いた装備が出ることもあります。

白猫と同様、クリアしたステージは高難度でプレイすることが可能です。
HARD」や「EXTRA」なら入手できる装備が良くなるので、クリア出来るならこちらに挑みたいですが、かなり難しくなります。
最低でも各キャラがレアリティ2以上の装備を身に付けていないと HARD は話にならないでしょう。

ただ、HARD や EXTRA はマルチプレイも可能で、LINE で募集するボタンも用意されています。
基本、上位の難易度はマルチを想定しているのでしょうね。
一緒にプレイできる知人が多いなら、上位の難度に挑戦して早めに強力な装備を狙えるかも。

ちなみにキャラの強化はステータスの上昇値が少なめで、装備の方が重要。
よって★4とか★5のキャラが出なくても、装備でなんとかできます。
ガチャが渋いという意見が多いですが、上位のレアリティでも攻撃モーションが使いにくいキャラは役に立たないので、使いやすい武器のキャラを優先しましょう。

ガチャは白猫とは違い、キャラガチャのみ。
よって強力な装備はハクスラらしく、敵のドロップで狙います。

サムライライジング
※装備の性能はレアリティが変わると、段違いに強くなる。
しかしこのゲームに武器ガチャはないので、ゲームを進めるか高難度にしてドロップ狙いをする必要があります。
エリア5~6辺りからレアリティ2の装備が出始めるので、装備集めはそこから本番。


サムライライジング
※キャラの育成は強化するステータスを自分で選択します。 ただし対応した御霊とオーブが必要。
レベルがある程度上がると「継承」の枠がアンロックされ、他のキャラのスキルを1つ習得できます。
ただし素材にしたキャラは消え、キャラはガチャでないと入手できないので、得られるスキルはガチャ次第。
また継承には大量のオーブを使うので、通常の育成でオーブを使い切ると行えないので注意。


しかしこのゲーム、気になる点が非常に多いです。
それは難点と言うより、デザインやシナリオの問題・・・

まず、和風ファンタジーをうたっているのに見た目が和風に見えない。 むしろ中華。
提灯が並んでいる屋台街は「千と千尋」な雰囲気を狙ったのだと思いますが、どう見ても台湾とかのアレ。
室内のシーンに至っては装飾が完全に中国。
中華系メーカーの開発だと勘違いされることもあるようですが、そう思われても仕方のないレベル。

ゲームが進むと和風らしいステージも出て来るのですが、だったらどうして和風をうたっておきながら、目に付きやすい序盤ステージを中華にしたのか。
それでゲーム名が「サムライライジング」なのだからパチモノ感 MAX です。

そしてストーリー。 ステージ終了後に LINE チャット風の会話シーンが出るのですが、長すぎる。
いくらなんでも冗長で、そこに LINE スタンプ風のマークが頻繁に割り込むため、今風と言えばそうなんですが、軽い。幼い。
雰囲気がコレなので、漢字のキャラ名もDQNネームキラキラネームに見えてしまう。

私はチャット風の会話シーンは別に嫌いではなく、ストーリーは出来るだけ読んでいくスタイルなのですが・・・
このゲームだけは早々に流し読み状態となり、中盤からは耐えきれず SKIP するようになってしまいました。
我慢できなくなってスキップしたのはホント久々です・・・

さらにすでに述べたように、モーションキャンセルしないと連打できない攻撃、ゲームが相応に進まないと楽しめない装備集めなど、序盤でユーザーを弾くような作りになっています。
スクエニ風の可愛らしいキャラデザインは悪くないと思うのですが、それをそのまま立体化したような 3D モデルも巷では批判が多いですね。

ガチャで高レアが出ないというソシャゲにありがちな批判は、私はナンセンスだと思うのですが、確かに 11 連ガチャをやって★3が 10 体(残り1体も確定の★4、つまり確定でないものは全部★3)だったのを見た時は、こりゃ厳しいと思わざるを得ませんでした。
前述したように高レアじゃなくても、装備が良ければ普通に遊べるゲームなのですが、そんなのはかなりゲームが進まないと気付けないし。

と言う訳で、iTunes レビューも Google Play レビューも★1の割合が非常に多いです。
正直、この作りでは仕方ないでしょうね・・・

サムライライジング
※序盤ステージは中華風屋台街。 建物の中も見事に中国。
悪いとは言わないけど、これで「サムライライジング」とか言われると、日本をよく知らない外国人のエセ日本ゲームに思えてしまう。
「アジアライジング」だったら違和感なかったんだろうけど。


サムライライジング
※会話シーンはセリフが軽く、しかもスタンプ連発で、全体的に少年マンガのノリ。
それはまだ良いとして、とにかく冗長。 今の半分か 1/3 で良いと思う・・・
右はたまにプレイできる、ご褒美が貰えるスゴロクシーン。 白猫プロジェクトの町に相当するもの、と言えば聞こえは良いですが、オマケスゴロクといった感じです。


私は巷の評価よりは、遊べるゲームだと思っています。
「白猫プロジェクトの劣化二番煎じ」という意見が多く、それはまあその通りなのですが、バトルの爽快感は特有のものがあるし、相応に進めば装備集めで一喜一憂できます。
武器ガチャが当たり前のこのご時世、ドロップ装備をチェックするのが楽しみなソシャゲはあまりありませんからね。

でも、これをやるんなら今は ドラゴンプロジェクト やるよな・・・
イルカアップスはスマホではネタゲーばかり作っていますが、今回はゲームでネタに走らなかった代わりに、発売時期で笑いを取りに来た感じでしょうか。

聞くところによると、おしり前側はジョブチェンジをゲームのウリにしたかったようですが、おしり後ろ側(スクエニ)が反対して現在の状態に落ち着いたようです。
ただ、結果論ですが、ドラゴンプロジェクトにぶち当たって白猫との差異も少ない以上、そうした特徴がないと厳しかった気もします。

しかしドラゴンプロジェクトはターゲットの年齢層が高めでソロ志向。
こちらは対象の年齢層が低めだと思うので、2000 年代に子供はポケモン、青年はモンハンと棲み分けが出来ていたように、こちらもうまくやれば棲み分けできないことはない?
と言うのは、ちょっと甘すぎるかな・・・
それに白猫型のゲームやるんなら、普通はそのまま白猫やるか・・・

白猫プロジェクト に飽きて似たようなゲームを探している人や、新しいアクション RPG を探しているけどドラゴンプロジェクトは合わないという人には、悪くないかもしれません。

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※Youtube 公式 PV