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Dixit + Cluedo(ディクシット+クルード)。
被害者の幽霊が見せる「ビジョン」が何を表現しているのか、創造力をフル活動させて推測し、犯人・犯行現場・凶器を当てて殺人事件の真相を探り当てる、ディクシット系のドイツゲーム(ボードゲーム)が公開されています。
Mysterium: The Board Game」です。

公開は Asmodee Digital というメーカーで、Colt ExpressPandemic など、単なるボードゲームの再現に留まらない、コンピューターゲームらしいアレンジと演出を加えたドイツゲームアプリを出しているところです。
今作もドイツゲーム系としてはクオリティが高く、ゲーム自体も 2016 年のボードゲーム愛好家による人気投票「ドイツゲーム賞」において5位になった作品。
よってボードゲームフリークにとっては待望のアプリと言えなくもないのですが・・・

ただ、ゲーム自体がコンピューターゲームに合ってなさ過ぎる・・・
だって Dixit 系だもの・・・

Dixit(ディクシット)は 2010 年にボードゲームの最高表彰「ドイツ年間ゲーム大賞」を受賞した、カードの絵のヒントを他のプレイヤーに伝え、他の人に当てさせる、ただし全員が当たると負けになるというゲームです。
抽象的な絵を参加者が独自の表現で伝えるこのゲームは、アナログゲームならではのゲーム性が評価され、類似ゲームが数多く登場するほどの影響を及ぼしました。

しかし、そんなゲームなので、コンピューターではダメなのです。
人間の表現力と創造力の再現は、機械にはまだ早すぎる・・・

ともあれ、ディクシット系のコンピューターゲームは珍しいので、今回取り上げておきたいと思います。
価格は 840 円。 買い切りなのでスタミナ・広告はありません。
課金は追加カード(拡張パック)を導入できるものが 360 円で販売されています。

Mysterium
舞台は 1920 年代のイギリス。 霊能探偵たちが、とある町で起こった殺人事件の調査を行います。
プレイヤーは2つの役割に分かれます。 一方は町に集った霊能探偵、そして1人は被害者の幽霊。
彼らは全員協力して事件の捜査を行います。
つまり対戦形式ではなく、真相が判明すれば全員の勝利で、失敗すれば全員が敗北です。

まず幽霊には、それぞれの探偵が調査すべき 容疑者・現場・凶器 が与えられます。
各探偵は別々の容疑者を追うことになり、同じものにはなりません。
現場や凶器もそれぞれ異なります。

Mysterium 2

そして幽霊には7枚の「ビジョン」カードが与えられます。
このゲームの幽霊は一切しゃべれませんが、探偵のプレイヤーに、その人の容疑者が誰かを示すビジョンカードを提示できます。

ビジョンカードは抽象的な絵になっていて、針が刺さったリンゴの彫像とか、白衣を着て杖を持ったネズミとか、意味深だけど意味不明な絵が描かれています。
探偵側はそれを見て、コック、医者、手品師、彫刻家など、様々な職業の容疑者を推測します。

Mysterium 3

ビジョンカードは複数枚提示しても構いません。 使った分だけ山札から補充されます。
いらないカードを処分するため、わざとまとめて提示するのもやり方の1つでしょう。
ただし探偵側が、カードが多いと混乱してしまう可能性もあります。

探偵全員にビジョンが提示され、探偵側が推理を終えたら、答え合わせに入るのですが・・・
プレイヤーが4人以上(探偵3人以上)で Clairvoyancy(洞察力)のルールを ON にしている場合、探偵側の画面上部にはチェックとバツの「洞察力トークン」があります。
探偵はこれを、他の探偵の上に置くことが出来ます。

Mysterium 4

これはその人の推測が正しいか間違っているかを当てるもので、その通りなら洞察力ポイントを得られます。
このポイントは最終局面で効果を発揮します。

この洞察力ルールのおかげで、探偵側は自分の推理が終わっても、他の人の推理が正しいかどうか考えることができ、全員が終わるまでヒマせずにゲームを行えます。
ただしこのアプリでは、1ターンの制限時間は3分。 オーバーすると強制的に答え合わせとなります。

答え合わせの結果、容疑者を当てた人は、犯行現場の推理に移ります。
その後、さらに凶器も当てたプレイヤーは、他の人の推理が完了するまで待つことになります。
(洞察力トークンでの参加は可能です)

Mysterium 5

ターン毎にタイマーが減っていき、全員完了する前にタイマーが尽きると失敗、ゲームオーバー。
その前に完了すると、いよいよ最終推理となります。

最終推理では、それぞれの探偵が調査した 容疑者・現場・凶器 が並べられます。
そして幽霊には真犯人が提示されます。
幽霊は手持ちのビジョンカードの中から、その犯人を表現していると思う3枚を場に出します。

それを見て探偵側は真犯人を推測するのですが、洞察力ルールが ON の場合、何枚見れるかは洞察力ポイントによって決まります。
もし洞察力が低い場合、最初の1枚しか確認することはできません。

それぞれの探偵が真犯人だと思う容疑者を選択し、意見が割れた場合は多数決で決定。
それが見事真犯人だった場合は事件解決、違っていたら迷宮入りで敗北。
最後にスコアが表示され、ゲーム終了となります。

Mysterium 6

ディクシットのルールを、うまくクルードや iM Detective のような事件捜査ゲームに落とし込んでいます。
ただ・・・ ここまで読んで何となく解ったと思いますが、これは人間同士でないと楽しめない感じなんですよね・・・

ビジョンカードが出されて、それが何を表現しているのかサッパリ解らず、後になって

「なんでこれがコックなんだよ!」
「このへんに鍋っぽいの書かれてるだろ!」
「そんなの解るかぁー!」

とか言い合うのがこのゲームの面白いところだと思うのですが、コンピューター相手だとそういうのがない。
訳のわからないビジョンを出されて全然当たらなくても、「どういう意味だよこれ!」と文句を言えないので、ただ単に納得いかない気分で終わってしまう。

逆にこちらが幽霊で、探偵にビジョンを提示しても全然伝わらない場合、発想力や創造力ではなく「このコンピューターどういう判定なんだろ」という考えになってしまう。
と言うか、明らかにそれと解るカードでない場合、ワザと外されるような気も。

一応ソロのストーリーモードがあって、探偵や幽霊の役割をこなしながらステージをクリアしていく内容になっているのですが、やっぱり人とやってナンボかな・・・
オンライン対戦も完備されていますが、まずはアカウント登録が必要になります。

Mysterium 8
※ストーリーモード。 ハリポタっぽい若者が主人公。 全9ステージ。

このゲームがドイツゲーム界で高く評価されているのは、まさにアナログゲームならではだからでしょう。
家庭用ゲーム機が普及した後、アーケードで対戦格闘や DDR、三国志大戦や戦場の絆が流行ったように、「それでないと体験できないゲーム」だから人気になっている訳で、よってまだこれをアプリで遊ぶのは厳しそうですね。
もちろん、このアプリが入ったスマホやタブレットがたくさんあれば人同士でも楽しめますが、それはかなり敷居が高い・・・

とは言え、最近のドイツゲームを語る上でディクシット系は欠かせないゲームの1つ。
それを体験してみたい、でもプレイしたことがない、そんなドイツゲームファンには価値のあるアプリでしょうか。

Mysterium: The Board Game(iPhone 版、iTunes 起動)

Mysterium: The Board Game(Android 版、Google Play へ移動)
Mysterium(PC 版、Steam へ移動)

※Youtube 公式 PV